第12章 最後の戦い
「………………!!!!」
奇跡の洞窟での電撃特攻終了後。勝利の余韻に浸るみんなを横目に見つつ、西園寺羽京はフ、と安堵の声を漏らした。
ーーこれで、火薬を作れる。銃があれば、司達も無闇にはーー
そう思った瞬間だった。一人のーー
ーー最愛の人の悲鳴を聴き届けてしまったのは。
《みん……な……逃げて……っ!!!!》
まるで瀕死の状態で、必死に上げたような、悲しい声。急いで自分も叫び、千空達の元へ駆け寄る。
「逃げてくれ!!逃げろみんな……!!!!」
そう叫ぶ自分の元に、一人の人間が投げ込まれる。
ーー血塗れになった、葵。
「くっ………!!」
何とか彼女を受け止めるが、あまりの勢いで千空達の方へと押し込まれる。科学薬品が勢いで飛び、ガシャンと壊れる。絶望の、音。
そしてーーーー
怪物二人を眼前に、その場の全ての人間が本能で理解した。
ーー科学王国の正気がたった今。完全に潰えた事をーー
「ーーやあ、千空」
「ーーよう、司。」
因縁の二人は、再会する。最悪の形で。
「葵……!!待って、くれ……やめてくれ……いつもの、イタズラで…!!」
羽京が必死に声をかけるも、その身体は、動かない。この出血量ではーー致死量だ。
嫌だ。もう聞きたくなかった。
ーー命の、壊れる音なんて。
「Don’t worry!!!」ゲンのリリアンの声真似が響いた。
「リリアンだ!!戦車の中にいるぞ!」「聞いてくれ!アメリカがーー」
「それも全てウソです。茶番は止めて出てきなさいゲン君」
歌姫寝返り作戦の真相も明かされる。
そして千空の首と引き換えに、生命を保証すると言われるがーー
「ダメだ!!ダメだ千空!!あの時と同じにーー
「ククク……どこが同じだ、デカブツ。あん時は俺一人だったがなーー
でも今ここにーー山ほどいんじゃねえか。
テメーも 科学王国のお仲間たちもよ…!!!」
「ああ……その通りだ、千空!!」
「……私も同感かな」
ふらり、と。生きてるはずのない人物が立ち上がる。スッとみんなによく見える洞窟前の特等席の前でザッ!!と立ちはだかった。
ーーまるで、奇跡の洞窟を守る女神のように。
「…………葵…!!!」