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僕と彼女の共同戦線

第11章 カウントダウン


「あれ、氷月。どうしたの?」葵は顔を上げた。
カーテン越しでも分かる、長身の影。このシルエットは氷月だ。

「君が指示したんでしょう」溜息をつく氷月。忘れたとは言わせませんよ、と続ける。

「そうだけど、本当に来てくれるとは思ってなかったんだよね。戦争集結までてっきりガン無視放置キメるかと」飄々としていると、いいからさっさと出なさい、と続ける。

「周りの見張りは外しました」
「そりゃ氷月が『拷問する』んだから監視は取れるでしょ」

「…追加の事情聴取の為に、司君の元に連れていくとしか言ってませんが」
「え、指示と違うじゃん!!拷問の方が氷月に似合ってるよ!!」生き生きと話す葵に業を煮やした氷月が、カーテンを開ける。

わっ、と思わず眩しさに目を覆い隠した。
部屋の中は、差し入れーーとどのつまり、
贈り物だらけだ。これが刑を決定、執行される殺人鬼の部屋には見えない。

「……早く出なさい」
そう言いつつ、氷月が牢屋の扉部分から顔を出す。

ーー葵の牢屋はクロムの時とは違い、外側が竹で出来た牢。しかも細工が凝っており、扉付きであった。扉と外枠を結ぶ部分に、縄が巻いてある。
そしてプライベートが見えないよう、内側にカーテンがあったのだ。

はいはい、と葵が出ると、スっと両手首を出した。氷月が慣れた手つきで縄を巻いていく。

「……テーピングみたいだね、氷月がやると」
葵がそう言うと、何を馬鹿な事を…と氷月が冷たい視線を送る。
はいはい、黙ってついて行きますよ~と仕方なさげに葵は歩いた。

最低1日は置いて司の元に連れてこい。そう指示したのは葵自身である。
恐らく、帝国内部はAonnの捕縛でぐちゃぐちゃだ。思惑通りである。だから、司は何らかの手段ーー
例えば監禁から監視に切り替える等の手段を取る必要がある。

そういう流れを読んだ上で、葵は氷月に「再度検分させろ」と言ってあるのだ。
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