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僕と彼女の共同戦線

第7章 差し伸べる手


先程まで澱みなく話していた葵が急にトーンが下がり、若干嫌悪感を滲ませたからか。千空の返事が若干遅れる。

「いわゆる『優生思想』に近い思想を持ってる。
彼は『ちゃんとしてる』って台詞よく使うでしょ。良くも悪くも頭の中身が空っぽだと判断したら、躊躇なく人を殺すよ。

現に、石神村襲撃時も数人毒ガスで殺してる。
千空、君の謀略に嵌って死んだって事にしてね」

「あ゙あ゙ー……そういう事か」
合点が行ったようだ。
「戦力で言えば、お前の情報だと司と氷月は互角なんだな?」

「うん。この辺は司本人に確認してるから間違い無いよ。だからこの二人が揃って拮抗してないと、銃とかが完成してないうちは危険なんだけど…。
さっきのカードを切った後は特に注意かな。司君は強いけど、流石に…」その後の言葉を飲み込んだ。


「…氷月については、司君には進言済み。裏切るのは目に見えてたから、氷月本人とも私の方で同盟を組んでるよ。司帝国が瓦解する『までは』大人しくする様に言ってある。一時的に共闘する、って形だね。
ーーカリスマ性のある私が氷月の過去やらなんやらを暴露して動きづらくなるのは必然だったからね」

「ククク…軍師テメー、よくあの氷月と渡り合えたな?」

「まあ、昔彼と同じ道場行ってたんだよ。そん時は私の方が筋がずっと良くて天才呼ばわりされてたからね。しち面倒臭い性格も知ってるからね。」

割と命懸けの綱渡りみたいな交渉したからねー本当、と笑って言ってみせると、千空が小声になる。
少し、心配そうに。
「…自分の命すら交渉にかけんのか、葵は」

軍師、では無く直接名前を呼ばれた。

……そうか。若くてまだ青く『人類70億人助ける』と言う千空君には分からないのか。

大人の必死さが。命をかけてまで何かをするのが、捨て身に見えるのだろう。私にはない…いや、大人になったから無くなった感覚だろう。

そして単純に命を何処までも大事にする気持ちがある。いいことだ、とフッと笑った。

「司君は若いからね、『大人は穢れてるから若い子達で世界を浄化する』なんて言うけど……
大人でも、自分の世代より若い子達に自分達よりも幸せな世界で生きて欲しい、助けたいって未来に希望を託すーー
【救いようのない馬鹿】が居るんだって事ぐらいは見て欲しいしね」そう葵は笑ってみせた。
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