第5章 二人の天才
『とっとと次はその葵を連れてこい!!』
ニッキーを仲間にした翌日。杠と大樹は葵をニッキーを連れて探し回っていた。
「アオさんなら、確かあの捕まった科学王国の奴の牢獄にご飯差し入れに行ったらしいぜ」
「「えっ」」
まさか、よりにもよって……。仕方がない。回れ右をするしか……
「そうか!ありがとう!!」
「…!?た、大樹君!?」
流石に科学王国のスパイと思われている自分たちが行くのは不味い。何とかその辺をニッキーと一緒に説得する。
「にしても、葵も物好きだねぇ……。まああの子は陽の奴に相当懐かれてるし、どうせ勇姿を見に来いとか言われたんだろ」
ニッキーははあ、とため息をつく。
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「あ!アオさん!!」
監視員の一人が叫ぶ。その声に、クロムは顔を上げた。今日もまた来たのか、と。
「はい~、アオさんです~。こんにちは~」
今日ものほほん、とした雰囲気を纏っている。
また差し入れですかと群がる男性達。
だが、興奮で群がったうちの一人がうおっと叫び、体勢を大きく崩す。パラパラと、硬い地面の破片が落ちていく。
「おい、お前…!!何やってんだよ!?」
「ご、ごめん……」
監視員が落ちかけた先にはーー車両特攻専用の罠。地面に竹筒が何本も刺さっている。
今回の場に今回の作戦担当の最高位監視員・陽は居ない。とはいえ、後で怒られるだろう。
(あれは……罠……!?なんで…!!)
「ここもそこもあそこも!!みーんな車両特攻用の罠なんだよ!!」「じゃあ助けに来た奴等みんな返り討ちだな!!」と監視員達がわいわい叫ぶ中、あの~と葵が割り込む。
「それ、本当は言っちゃいけないやつなのでは…?」
「「あ……」」監視員達が青ざめる。
「でも私がお声がけしたから罠踏んじゃったので…後で陽君に謝っておきますね」申し訳なさげに言う彼女に、いやいやうっかりしたこっちが悪いんで!と監視員が全力で止めにかかる。
普段陽と付き合いのある監視員達からすれば、鉄拳制裁が待っているのは分かっていた。
きっと葵が間に入れば何とか軽めに収まるとは思うが…それでもやはり、彼女は非戦闘員で、娯楽なき司帝国の唯一の光である。彼女を盾にしてしまうのは申し訳ない…という気持ちだった。