第4章 仮面の下
「いやああああああ恥ずかしいから止めて!!ただの惚気!!近所迷惑!!止めて!!!!」
「……『僕のお嫁さんの料理は、今日も変わらず美味しいなあ』」
「あああありがとうございます!?じゃなくて!!今結婚してるの知ってるの司君とかニッキーちゃん達とかだけなんだから!下手に知られてファンが離れたら私の軍事力に影響あるし!!」
「あはは、君の可愛い反応見れたし、もう言わないよ」
それはそれで複雑なような…と思いつつ、葵は取り敢えず息を整える。
「……ねえ、思った事はちゃんと僕には言ってね?君は問題事を一人で抱え込みがちだし、すぐ突っ走るからね」
そう言う愛しい人の包み込む様な笑顔。
「そうですね…。戦争とか無かったら、もう少し…結婚の余韻に浸りたかったな~って…」
「あはは、それはそうだね…」こればっかりはどうしようも無いが、愚痴位はいいだろう、と零す。
「具体的には……ハネムーンとか行きたいです!
このご時世で無ければ!!」地団駄を踏む葵。
「それはまた壮大な気が…?ちなみにどういう所に行きたいの?」
まあまあ落ち着いて、と言いつつ希望を聞いてくれるのである。優しい。
あまりに優しすぎるが故に、彼は不器用だ。そこをその分一線を引いて割り切り、冷徹になれる葵の行動力と策謀力がカバーする。
そして、本音を言わずに1人で何とか策謀力をもってして何とかしてしまう、これまた違う意味で不器用な彼女の心に自身の優しさを持ってして寄り添うのが、羽京であった。
二人は自然とそういうバランス構造の上に関係を作り上げていた。
「具体的には……そうですねぇ、南の島の海の綺麗な所でバカンスしたいです」
「大きく出たね?」
「夢くらいは大きく持たないと!!」
「あはは、それはまあ…そうかもね」
笑いながらじゃあまたね、お互い頑張ろうね。と、言葉を交わした。
ーーまさか本当に、本当に遥か先の年単位の話だが。南の島でバカンス……ならぬ壮大なアドベンチャーを繰り広げる事になるとはこの時は思っていなかった。