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僕と彼女の声帯心理戦争

第8章 【第2章】 天下三分の計


碁石は作る。…つまり、チェスの駒の方は増えない。増えるのはーー

「碁石が、今いる司帝国の普通のメンバーってこと?」
「ふぁい~~」
痛いよ~~とワザとらしく痛がるのを他所に、羽京は箱の中が見やすい様に碁盤とチェスの駒を除くと数を数えた。

(……要職についてる人以外、全員分ある。そして、碁石は白と黒と灰色……)

「まさかとは思うけど……君の勢力図でもあるの?これ」「そのまさかですな~」
ええ…これには流石に引いた。

「そうドン引きしなくても~~」言いながら彼女は羽京が軽く触った碁盤をよいしょ、と出すと自らの布団の上に固定する。更にチェスの駒をトントン、と置く。

「うきょーくんはこういうのよくやるんです?」首をくい、といつもの様にやる葵。
「まあ、ね」「そうなんですか~私は普段はやりませんが~」

コトン。全ての駒と碁石が置けた状態で、フーっと彼女が息をつく。

「……策謀でしたらよくやるので~。今回は見やすい様にしてみただけです」
「策謀…ね」数日前も聞いたワードを噛み締める。

盤上に展開されていたのは、司帝国内部の勢力図。
キング…即ち司に近しい者は白く、そしてグレー、黒と分けられている。
そして氷を冠したもうひとつの『キング』
自身を表すかのような弓を持った兵士。

そしてーー

コトン。盤上に彼女が黒い碁石の中心に音符を飾った『クイーン』の駒を置いた。

「……羽京君。司君に伝達事項です」
「断る余地は…」「無いですな!」
「はぁ……分かったよ。それで内容は?」
「私は体調不良…要するに高熱を出してしまった事にしといて下さい。それと『お見舞い希望』とだけ」
ふふ、と彼女が意味深に笑った。

羽京は盤上を見やった。彼女に近しい碁石はーー黒い。それもかなりの数がある。
そして意味深なもうひとつの氷を冠したキングもまたーー『クイーン』の横にあった。

……考えた所で、この目の前の女性の頭の中は分からない。
ふんふんふん~と言いながら盤上の駒たちを片付ける葵にー分かったよ、伝えておく。
と告げた。
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