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僕と彼女の声帯心理戦争

第8章 【第2章】 天下三分の計


「葵……!!アンタ、何があったんだい……!!!!」

羽京が葵の寝室の前まで辿り着くと、中から、そう泣き叫ぶニッキーの声が聞こえる。
本当かどうかは分からないとはいえ…流石に気絶した人の近くで大声はどうだろう。

「…あはは、ニッキー。あんまり大声を出すと、葵の身体に良くないんじゃないかな」
そう言いつつ、入っていい?と聞く。
「あ、ああ…そうだね、済まない、葵…!!」
ニッキーが言うと、目覚めていたらしい葵が気にしないで、羽京君入っていいよ、とか細い声言った。

寝室に入ると、少し青白い顔でベッドに横たわる彼女と、彼女の手を握るニッキー。

「……羽京、アンタこの子になんかしてないだろうね?」ニッキーがキッ、と睨む。
「あはは……」ニッキーからしたら、監視役の自分が怪しいのだろう。

「大丈夫だよ、ニッキーちゃん……しんぱい、しないで」ね?と優しく微笑む葵。アンタが言うなら…と言って、ニッキーが手を離す。

「羽京君と少し、お話したいな…。ニッキーちゃんも、お仕事あるよね?……行ってきて」
「けどアンタ…今日のライブとか、流石に休んだ方がいいんじゃないのかい?」
「そうだね…。ちょっとまだ万全じゃないし、そうしようかな。ファンのみんなに連絡、お願いできる?」そう頼むと、任せときな!と言ってニッキーが出ていった。

「……もう聴こえない範囲かな」フッ、と。表情の消えた声で彼女が言った。
「……やっぱり、全部演技か」ハァ、と羽京がため息をつく。
ーー少し前まで彼女を傷つけまいと頑張った自分が馬鹿らしく見える。

「あはは……ちょっと一芝居、打たせてもらいました~」
「ちょっとではないよね?」
「うん……。でも、必要な『儀式』だったんだ。……ごめんね、羽京君」そう本当に申し訳なさそうに、優しく包み込む様な声で彼女が囁く。

これには流石に驚いた。彼女が散々迷惑をかけてきて、楽しそうにしてた事はあれど、こんな風に謝る事は無かった。

「……反省してるなら、今後ああいうのは止めてね?」
「うーーーん……」「なんでそこで悩むの…!?」
思わずツッコミが入る。

「いやあ…羽京君にはちょーっと今後も『動いてもらう』予定がありましてな~」のほほんと告げる葵。
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