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僕と彼女の声帯心理戦争

第12章 【第3章】心の中に居た人


ーー思い返せば。僕は、彼女が勝手にではあるが『動いてくれた』お陰で色々な恩恵を得ている。

彼女が信頼の置きにくい参謀ーー部下となる事でシーソーゲームの様に僕自身への司からの信頼度は上がった。彼女の監視役任務こそあるが、それ以外は比較的自由だ。…時々、こないだみたいに気まぐれを起こす困った猫ではあるが……

それでも、彼女が司の石像破壊を止めてくれた。
監視役として彼女の動向を見守る中で、必死に石像を修復する姿に救われた。
自分も、僅かではあるが壊された命を助ける手伝いが出来た。

彼女が『軍師』として台頭した上、事前にどういう事をするか、サラッと監視役だからという名目で教えてくれる。必然的に国内の政情の事情通になった。

ーー確かに、彼女が来る前よりもずっと自然で居られた。彼女は人を引っ掻きまわしはするが、結局目指しているのは恐らく平和的な、血を流さない世界だ。そしてその世界を他でもなく望むのはーー

「…………ッ」
「……羽京?どうした!?」

流石に耐えきれなくなったのか、大樹が声をかける。もう肝心の会話は終わり、普通の女子会として他の話題に移っているので大丈夫だがーー

「……何か、悲しい事でもあったのか?」心配そうな大樹に聞かれる。
……一筋の涙が、頬を伝っていた。

「……いや、逆かな。……『良い事』だよ」

そうかー!!なら良かったぞ!!と言う大樹を横目に、思考する。

……彼女が何も求めないのは知っている。その献身が分かりづらい様に、きっと敢えてあんな風にふざけているのも。

ーーでも、彼女が幾ら『自分の為だ』と言い張った所で、それをどう受けとり、行動するかはこちらの権利だ。

遥か向こうの彼女に想いを馳せつつーー僕は独り言を零した。

「……本当に…、君は手がかかるね」
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