I don’t want to miss a thing.
第1章 …I'll be there for you.
そんなマイキーの様子に、一瞬で我に返った俺は、見るからに手の込んだ料理が並ぶテーブルを眺める。
「………これ全部椿木さんの手作り?」
そして、マイキーとマイキーを叱るエマの様子をくすくすと笑いながら見つめていた椿木さんにそう尋ねれば、椿木さんは照れたように顔を少し染めてはにかんだ。
「……うん。ちょっとエマちゃんにも手伝ってもらっちゃったけど……料理は昨日の夜から少しずつ仕込んでたんだぁ。……タカちゃん誕生日だって聞いて、何作ったらタカちゃん喜んでくれるかなーって考えてたら、ちょっと一杯作りすぎちゃった感、アルネ。」
なんか恥ずかしーな、そう言って眉を下げて笑う椿木さん。
目の前で恥ずかしそうに微笑む椿木さんを見ては、俺はドクンドクンッと胸が高鳴るのを感じた。
こんなに心の底から嬉しいと感じたのはいつぶりだ?
きっと椿木さんのことだから、誕生日と知ってからは寝る間も惜しむくらい一生懸命考えて、悩んで、練習して作ってくれたのだろう。
ここ最近のいつも眠そうにしていた椿木さんの姿を思い出しては、彼女のことを心の底から”愛しい”と想った。
「……タカちゃん?」
しばらく込み上げてくる感情の波に心を預けていれば、椿木さんが少し不安そうに顔を覗き込んできた。
「ん?今、幸せ噛みしめてんの。言葉にならねぇくらい、今、俺めっちゃ喜んでっから。」
そう言って、綺麗な髪の毛を撫でれば、椿木さんは「…そっかぁ、よかった。」と言って心底安心したような笑みを浮かべた。
「おー三ツ谷、何そんなとこでずっと突っ立ってんだよ。食わねぇなら俺らで全部食っちまうぞ?」
いつもより一段と可愛く見える椿木さんのことを見つめていれば、痺れを切らしたかのように、場地が口を開く。
「三ツ谷君、凛子さんが可愛いのはわかるけど、これまじで旨そうっスよ!」
「早くしろよ、三ツ谷。俺は早く凛子ちゃんのケーキが食べてぇんだ。おい、エマ、いい加減放せ。」
「ダメ。マイキーはウチが掴んでなかったら、すぐつまみ食いするんだから。」
「は?お前ら何言ってんだ?それ全部俺のだろ。お前らには食わせねぇよ。」
俺がそう言うと同時に、料理取り合い合戦のゴングが鳴った。