第22章 吾妻悠生
「ホント嫌いなんですよ…お化けとか幽霊の類が。それなのに…」
「カノの泣き顔が見れるからオレはお化け屋敷好きだなー♥」
「馬鹿!ドS!」
「"馬鹿"は聞き捨てなんねぇけど…オレがドSだって思ってんなら、それはカノだけだよ。好きな子ほどいじめたくなるって言うだろ♪」
「ううう……っ」
「それにやっとカノと手繋げたし。オレとしてはすげー嬉しいんだけどなぁ」
「僕だって…マイキーくんと繋げて…嬉しいですよ」
視線を逸らしながら照れ顔で言う。
「カノ!!足元から白い手が…!!」
「ひいっ!?」
「なんちゃって☆」
「……………。」
咄嗟にその場から飛び退いて地面を見る。するとマイキーが"えへっ"という効果音が付きそうな悪戯っ子の笑みで笑ったのを見て、からかわれただけだと思ったカノトが、無言の怒りでマイキーの腕をべしっと叩いた。
「最低ですマイキーくん」
「ごめんごめん。緊張をほぐしてやろうと思ってさ。ちょっとからかっただけだって。」
「ほぐすどころか心臓バクバクですよ!!」
「にしても…ぷっくく…"ひいっ"って。はは!すげー悲鳴!飛び退くのも早かったな!」
「笑い事じゃないんですけど!!本当に怖かったんですからね!?ちょっとは反省し…」
「あ。カノ、後ろ。」
「もうその手には引っかかりませんよ。どうせ振り返っても何もないんでしょ…」
"んばあっ!!"
「きゃあああああ〜〜ッッ!!!!」
「っ!」
心の準備もしないまま、後ろを振り返れば、血まみれのゾンビが目の前にいた。その瞬間、女の悲鳴を上げたカノトは勢いよくマイキーの腕にしがみついた。
「出ッ、出たッ!!ゾンビ出たぁ!!」
「ゾンビの被り物したスタッフじゃん」
「冷静に言わないでください!?」
「あっちの通路って何があんだろ。ほらカノ、泣いてないでこっち!」
全くゾンビすら怖がらないマイキーはカノトの手を引き、通路へと進む。一人残されたゾンビ役は"男から女の悲鳴が聞こえた…"と驚いた様にぽつんと佇んでいた。
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