第56章 彼の運命
「これより"梵"の全体集会を始める」
「千咒!!」
「千咒!!」
「千咒!!」
更に盛り上がりを見せる千咒コール。階段を下りて中央で立ち止まった千咒が右手を上げて制すれば、先程まで騒がしかった場内の歓声が嘘のようにピタリと静まり返った。
「新メンバーを紹介する!!前に出ろ!!まずは花垣武道!!!」
千咒に名指しされたタケミチは、緊張した面持ちで階段を降り始める。
「83抗争!!血のハロウィン!!!聖夜(クリスマス)決戦!!そして関東事変の中心人物!!」
その場にいる誰もがタケミチに視線を集めた。
「元東京卍會、伝説の壱番隊隊長!!黒龍の最後の継承者!!」
千咒によってタケミチの経歴が明かされ、次は自分の番かとカノトは真っ直ぐ見据える。
「そしてもう1人!!宮村心叶都!!」
周りの視線が今度は一斉にカノトに向いた。階段を降り始めたカノトに千咒の紹介が始まる。
「83抗争!!血のハロウィン!!花垣と同じ関東事変の中心人物!!」
「……………」
「元東京卍會、壱番隊隊長補佐!!『皇帝』と恐れられた宮村望の実妹にして、あの無敵のマイキーのお気に入り!!!」
「(そこまで紹介しちゃう!?)」
まさかマドカの名前まで出るとは思わず、驚いた表情で微かに笑みを浮かべる。だがその途端、場内がザワつき始めたことに気付いた。
「え…っ、皇帝ってあの…!?」
「学校に乗り込んできた不良30人を相手にたった一人で全員返り討ちにしたっていう…?」
「あの宮村望の妹!?」
「(兄さんこんなところでも有名なのね…)」
「しかもマイキーのお気に入りってマジかよ」
「じゃあ相当強いんじゃねえか?」
「けど見た感じ不良っぽくなくね?」
「(よく言われます。)」
様々な反応を示す梵メンバーの言葉に苦笑しながら階段を下りてタケミチの隣に並ぶ。
「着ろ!二人とも!これが今日からオマエらの特攻服(トップク)だ!」
両腕に桜の花が刺繍された梵の特攻服を手渡される。
「梵にようこそ。花垣武道、宮村心叶都。」
二人の紹介が終わると千咒はくるりと背を向け、両手を広げた。
.