第4章 抱擁
あたしをじっと見つめて、とくとくと話す悟くんに自然と目が奪われてしまう。何度も言うけど、あたしは悟くんの和装が好きだ。目の前の悟くんがまさにそれで、そんな彼が思いもよらない甘い言葉を言ってくれる。
何が悟くんをこうしたのか、高専なのか、喧嘩なのか、物理的な距離なのか、それはわからないけれど、あたしは胸の高鳴りが収まらない。
「なぁ、進路って決めた?」
「え? 急になに?」
「オマエ、ガリ勉してたけどまさか普通の高校、受験するとか言うんじゃねーだろな?」
このまま悟くんの側にいてもいいのか、いてあたしの心は大丈夫なのか? 離れた方がいいのか? いまだによくわからない。
でも、今、ひとつだけはっきりした事がある。
あたしは五条家の使用人になるのだけは嫌。見たくもない婚約者を見て悟くんが作る家族を見て過ごす未来だけは絶対に嫌。
「まだわかんない」
「高専来いよ、呪術師やれよ」
「……」
「このままだとオマエは独り立ちするまで五条家の中でずっと肩身狭い思いして生きていかなきゃいけねーじゃん? でも呪術師なら俺と対等だし、金も入るし、強いやつが発言力ある世界だし、夕凪はちゃんと存在出来る。俺がガキんときから教えてきたからオマエは相当つえーよ、安心しろ。ぐだぐだ言ってる奴ら黙らせよーぜ」
「そんな理由で呪術師になるなんて不純じゃない?」
「どんだけマジメなんだよ。十分すぎるわ。俺はちゃんとした理由なんてないしね」