第4章 抱擁
「もう帰ってきたの? 早くない?」
「まぁー」
悟くんは適当な相槌をして徐にサイドテーブルに手を伸ばす。
「あ、これ新しい携帯? いいじゃん」
――そ、それは、ダメ!見ちゃダメーーーー!!
待ち受け画面のあの2人の写真を見られたら、絶対悟くんに揶揄われる。そんなに俺のこと見てたいのー? とか言って。
「だめだめだめ、それ触っちゃだめ!」
「なんで?」
「いいからっ!」
あたしが慌てて飛びつくと、悟くんは意地悪そうに笑って携帯の電源ボタンの手前で親指をストップさせてる。多分必死の形相をしていたと思われるあたしをちらっと見て、悟くんは電源ボタンを押さないまま携帯をぽんっとあたしに渡した。一言添えて。
「その写真俺にも送っといてー」
そろそろ支度しねーと、と言って悟くんは出て行った。
……。え? なんなのさっきの言葉は? 写真ってまさか待ち受け画面のこと知ってたの? 見たの?
そっか、なるほど納得だ。あたしを起こす前にきっと悟くんは新携帯を見つけてそれを見たんだ。軽い気持ちで。新機種への興味で。
「性格、悪っ!」
あたしが携帯見られそうになったら慌てるの分かってて悟くんは楽しんでた。
でも……からかったりはしなかった? 俺にも送って、ってそれどういう意味?
ぐだぐだとこんな事を考えている場合ではない。そろそろあたしも支度せねば!