第10章 別れ
IIに並べられている家系をささっと3度読み返す。いずれも術師の旧名家。
ただでさえ親戚が少ないあたしにはどれだけ血縁をまたいでみても、かすりもしない縁遠い家系ばかり。もちろん尊家はリストにない。
――落胆した。期待してしまっていた分、一気にドーンと暗闇に落とし込まれた。茫然自失の中あたしは、巻物を元通りに巻く。
こんな状態で長老が来たら大変だ。手の震えは相変わらず止まらないけど、慎重に軸を巻き、和紙が偏らないように注意する。解くよりも巻く方が難しくて何度か巻き直しをする。
遺言の内容を思い出したら涙がこみあげてきそうになるけど、そんなものが、和紙についたら大変だ。ひたすら巻物を元通りにすることだけを考えた。紐を縛ってゆっくりと巻物をキャビネットに戻す。
深く大きなため息をついた。こんな遺言書を目にしても、悟くんはなんであんなに穏やかにいれるんだろう? あたしの事どうするつもりなんだろう?
今まで通り付き合うって言って、海外に連れて行ってくれたり、高価な着物をプレゼントしてくれたりして、悟くんは、これまでと変わらないかそれ以上にあたしの事を大切にしてくれていると感じていた。
何もかもがわからない。完全に振り出しに戻った。悟くんに直接、この遺言についてどう考えているのかを尋ねてみたいけど、それは出来ない。なんせ、本家以外には開示されないのだから、見てしまったなんて言えない。胸の内にしまっておくだけ。