第6章 キスの味
――キス。あたしにとっては生まれて初めてのキス。
人口呼吸のドキドキなんて比じゃないくらいに心臓が高鳴って、悟くんの柔らかい唇があたしの唇に重なっていて、頭がぼうっとしてくる。身体中の力が抜けそうになる。
最初軽く触れただけのキスは、すぐに離れて2度目は強く押し当てられた。悟くんが鼻先をずらして1ミリの隙間もないくらいあたしに密着してくる。
全く息が出来なくて苦しい。キスは鼻で呼吸するんだって何かの雑誌で読んだ事がある。
あたしの不慣れな呼吸に気付いたのか悟くんは一度、顔を離すと、今度はあたしの唇をゆっくり食べるようなキスを続けた。
――キスってこんなに長いものなの?
どうしていいかわからなくて、あたしはそのまま従順に食べられるようなキスを受け止める。
唇の刺激が脳に伝わって全身に化学反応が起きてるみたい。体中を巡る温かい血液で肌が赤く染まる。お腹の奥からじんわり熱のようなものを感じた。
ほんの少しだけ唇が離れたから、あたしはもう一度告げた。
「好き、大好き」
「大放出だな。小出しにしろよ、慣れねーわ」
近くでつぶやいたから、話しながら互いの唇に触れてしまって少しクスってなる。悟くんありがとう。あたしが後悔しないように生きて戻ってくれたんだよね?
微笑むともう一度彼が近付いてきたから目を閉じる。優しく唇が重ねられると、悟くんはそのまま強くあたしを抱きしめた。