第20章 10月31日 渋谷にて
なずなの目の前に陀艮の手の影が差す。
……あ、頭、潰される……
動けない……!
なずなの髪に手が掛かった時、陀艮の腕に勢いよく何かがぶつかってきた。
「弱ぇって言うならよぉ」
蹴りを大刀で受けた真希が折れた大刀の柄を投げたのだ。
「一撃で殺せや、タコ助!」
言い放った真希は口の端についた血を手の甲で拭う。
クソッ、しくった。
先に恵と合流しとくべきだった……!
いや、そもそも持ち出し許可なんて待たずに私が……!
「ならばオマエも、2人のように喰い尽くしてやる」
―領域展開―
「嵌合暗翳庭」
突如浅瀬が割れ、大きな水柱が上がった。
海水を押し退けて黒い影が迫り上がっている。
その中心には掌印を組んだ伏黒がいた。
伏黒の目にまず飛び込んできたのは呪霊を前に竦んでいるなずなと折れた大刀を持ち、負傷している真希だった。
「真希さん!渡辺!!」
「伏黒くん!」
七海と直毘人の姿が見つからないが、まずは2人を助けなければ。
伏黒は影を真希の所へ伸ばす。
真希の目の前で止まった影から游雲が浮き上がってきた。
真希は反射的にそれを掴んで構える。
「オマエって奴は本当にクソ生意気な後輩だよ……!」