第20章 10月31日 渋谷にて
「……っ!?」
百斂が解けた!?
メカ丸の狙いは、脹相が体外で操る血液を水に溶かすこと。
赤血操術は呪術効果を上げるため、常時血液の凝固反応をオフにしている。
そのため、脹相の血液は他の者より水に溶けやすい。
加えて水に晒された血液の中では、浸透圧により赤血球が膨れ、細胞膜が破れていく。
血液の約45%を占める血球成分が維持できなくなり、百斂は解かれたのだ。
今、この状況下において、脹相は体外での血液操作が不可能となった。
戦闘経験の浅い脹相は自身に何が起こったのか理解していない。
だが冷静に現実を受け止め、血液操作を体内で完結させる。
「赤鱗躍動・載」
脹相の顔の紋様が広がっていく。
虎杖の視線は破壊されたメカ丸から脹相に移る。
理屈は分からねぇ、
そんなん聞く余裕なかったからな。
……だが、これだけは分かる。
俺の土俵に持ち込んだ!!
両者が距離を詰め、水浸しの中徒手空拳でやり合う。
穿血や超新星の脅威がない近接戦闘だ。
虎杖の方に分がある。
ジリジリと、だが確実に脹相を押していく。
脹相の打撃を避け、頭突きで怯ませると頭部に蹴りを入れる。
勝てる……!
勝利を確信した時、
水に晒さぬよう……
水に溶け出さぬよう……
限界まで凝固圧縮し、呪力で強化した血の塊が
虎杖の肝臓を貫いた。