第7章 このリセットは強くある為に
「強さを貪欲に求めるのはもちろん良い事だよ?けれど言っておくよ。自身の治療にあまり自惚れるなよ?自信を持ちすぎてどうでも良いタイミングで死なれたら困る。キミの先祖も自分の式髪の調整がうまく出来ずに死んでる人が多いだろ?」
手記に一部の先祖の死に至った原因が書かれていた。私は悟の言葉を聞いてそれらの文面を思い出した。
病気や天命を全うした人はいない……一族から離れた母でさえ。
「オマエはそういう呆気ない死に方をするなよ?」
『……そんなつまらない死に方はしないよ、私は』
強くなろうとしてるのは行き急ぐ為じゃない。
何もかもを見通してしまいそうなその瞳としばらく見つめ合うと、肩を落としていつものように無邪気に笑った。
「ほんと、オマエのそういう所……俺は好きだよ」
時々、こうも"素"のような部分を見せられるとどきっとする。
正座から膝立ちして、机の周りを半周…悟のすぐ側に行くと真っ白な睫毛が何をするのやらと、期待するようにぱさぱさと羽ばたいてる。
手を伸ばしてふわふわの髪を撫でる。お風呂はまだで今はしっかりと乾燥している暖かくて柔らかい白髪。表情はちょっと恥ずかしそうだ。
「僕をそうやって撫でるの、好きねえ~…」
『触れ甲斐があるんだよ。
……私は大切な人達を残して先に死ぬとかしたくない。大好きな悟の為にも私のここに来た方針、"生きる為"ってのは変わらないんだ。でも心配してくれたのは嬉しい、かな。ありがと』
「……そっか」
にこ、と口元が弧を描き、私の撫でる手を掴んで強い力で引き寄せられる。
背からもう一方の手が悟側に引き寄せ、近付くスカイブルー。舌が絡み合い貪るようなキスを繰り返して。
互いに抱きしめ合った、私の耳元で悟は囁いた。
「今日、抱いても良いだろ?ハルカ…。僕はさー…たった一回じゃハルカの全てを理解出来ていないんだ。もっとキミの奥深くを知りたいんだけれど……」