第40章 悔いのない人生を
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私の持つ呪力を大地の奥深くへと縛りを解く為に送って空間を広げる……。私が死んでからここに居た女達全員の呪力を解き放つ事に慣れてしまったって事と私自身の持つものが少ないという事もあり、仕上げを始めてしまえばあっという間で。
ここの主である者が不在になる事、そして領域を維持する呪力不足……それがこの空間をなくすための方法。いよいよ大詰めとなって、私に残った僅かな呪力がこの領域へと捧げられる。
直ぐ側には悟が居るんだ、お互いにとっくに死んでる……言葉を交わさなくたって、たくさんの思い出がある。
生きてきた時間よりもここで過ごした体感した時間の流れの方が長く感じて、待ち侘びた気持ちで一分間に収まる程度の呪力を送る。
最後のエネルギーとなる私が領域を地下へと最後の拡張を僅かにすれば、脱力に似た感覚を久しぶりに感じた。
眠りにつきそうな、あの気だるい感覚……。そういえば、学生の時とか何度か体験したかも…そして皆に迷惑を掛けた、ぶっ倒れた体の記憶。痛みとかしばらく感じちゃいないけれど、私はドッ、と両膝から地面に着いた。
目の前には枯れた青薔薇の木。それを前にして正座をするように力なく座り込む。
立てないな…、とひとり笑って伸ばした手で私に見える角度に…と青薔薇に震える手を添えた。
『(……あ)』
枯れたままだった薔薇の木。今まで堪えていたのか、時が進んだのか。ぽと…、とついに落ちた花。
それを合図にというか、ミシミシという軋む音に顔を向ければ今までなんの変化も見せなかった大きな枯れ木が、風も無いのにこちらに向かって倒れ込もうとしてる。
動けないのは当然だし、倒れ込んでこようとも痛みも感じないし。
死んでるんだから『生きたい、死にたくない!』というような避ける理由がない…これ以上痛めつけられたとしてもその先はどうなるのか分からないけれど……。
地面に落ちた、枯れても美しいままの青薔薇を震えているらしい両手で掬い上げ、こちらに向かって倒れ込む木をぼうっと見てた。地面を毟るように見えない地下に這っていた根がべりっ、と倒れ込む大木のバランスに堪えきれず地上にその根が現れ、夕日に向かっていた多数の枝がこちら覆いかぶさるように倒れ込んでくる。