第40章 悔いのない人生を
「いや、うん……僕こそごめん、冷静になれなかった。オマエを責める言い方しちゃった…。
僕がハルカを大切に想うように、オマエも僕をとても大切に想ってくれてるのは知ってる、知ってるんだ……。僕だってハルカの立場で、オマエが死んで生き返らせる事が出来るというなら喜んでハルカと同じ行動をしてた。
僕が、ここに来てキミに言うべきことは"ありがとう"……だね…?」
潰れそうな花束が互いの胸元から開放され、私は悟の顔を見上げた。
久しぶりの彼の表情をまじまじと見れば私が願ったように、生きた証を…時の流れをその綺麗な顔に少しずつ年輪のように刻んでる。
それから泣いた事もあってか目元や鼻が赤くて……。
それでもその潤んだ瞳の六眼がきらきらと、ここにはない青空や澄んだ沖縄の海、それから星空の記憶を思い出させてくれた。
閉じ込められた世界に呪力を満たしたように、私の心を逢いに来てくれた悟が満たしてくれている。
『……良かった。悟がこうして元気に生きていてくれるなら、皆も大きく成長してくれているなら、私は幸せだよ?』
「ふふっ……みーんな、内面が僕よりもハルカに似て真面目ちゃんに育っちゃったからねえ~……」
ははは…、と少しだけ離れた位置に居る大きくなった子達を見て。それから私は悟を見上げた。
「死んでからのオマエの目標はどう?計画が順調かな?」
『ん、少しずつ進んでる……あれこれ考えて行動してさ。だからね、悟…』
逢いたい気持ちは分かってる。逢いに来て欲しい気持ちもある。
でも、後の世代を考えてなら厳しい事を言うかもしれないけれど、私の決心でやっと、三人分の魂を縛り付ける膨大な呪力を使い果たした所だった。これはとても長い時間費やしていく仕事。
来るたびにきっと、娘達の溜め込んだ呪力をここに来た時に通行料として領域は私の意思なんて関係なく娘から搾り取る。それをまた、地面の下の奈落の拡張に使って……というサイクル。