第37章 繋ぐいのち、五条と春日の鎹

だってさ……せめて一緒に見たいじゃん、一番頑張ったのは僕の奥さんなんだから！

｢こんなぼろっぼろに泣いてて俺、息子の顔がどんなだか分かんねえよ……｣

聴こえる鳴き声と同じく僕の涙も止まらない。嬉しくて胸に色んな感情が溢れて涙と一緒に出ていってるみたいだ。
そんな僕を向き、ハルカが力なく笑った。

『ははは…っ、じゃあ、一緒に見よっか？』
｢……んっ、見る…、｣

痛みから開放されても嗚咽を上げ、僕に釣られるように泣く彼女。互いにぼろぼろに泣きながら、ハルカの側にと茹で上がったみたいな小さな子どもを抱えてきたふっくらとしたおばちゃんスタッフ。

一度僕らは濡れた目元で見つめ合って頷いた。覚悟はいい？なんて言葉無くとも作ったんだ、産んだ・産ませたんだ。これからは親子としての家族が僕らの生活に入る。
助産師の腕の中、それを目で追って、ハルカの隣にゆっくりと寝かせられた小さな生命……。

｢わあ……、可愛いねえ…、小さくて、元気で…｣

短くて、小さな手足をバタつかせてそんなに小さな体なのに大きな声を上げる蒼空を一緒に覗き込んだ。顔をしわくちゃにしてさ、ギャン泣きしてるけれど頭部に生えた毛色は白銀。
僕の遺伝子か、それとも白髪化する春日の系統か…そんなの、どうでも良いよね。ふたつの一族を繋いだ子供なんだからさ！

｢ふふふ…っ、こんなに大きい子がハルカの中に入ってたんだねえ…｣

グラム数を教えてくれたスタッフが｢大きい子ですね｣って言っていたけど、人間としてはとっても小さな存在。
疲れ切ったハルカの顔の側に並べられてからハルカがそっと、震えた手で赤い頬につんつん、とつついてる。なにこれ、宗教的ワンシーン？
すっ…、と存在を忘れてたスマホを構える。瞬時に向く彼女の瞳。野生の本能みたいに機敏だったんだけど？