第37章 繋ぐいのち、五条と春日の鎹
ここまで一緒に寄り添ってきたってのに今更視線を泳がせてる彼女。遠慮してるのかな?でも大丈夫だよ。出産に何時間掛かっても僕はキミの側でこの先も寄り添いたいんだ。
まさか遠慮するとは思わなくてちょっとだけ驚いた僕は慌てた彼女を見て笑みが溢れた。
「なにチキってんの、オマエ……分娩室も一緒に着いてくに決まってるでしょ。僕が側に居るよ、全力で応援するからさあ~…」
そう言っても目の泳ぐハルカ。とても大きな風船みたいに丸いお腹を擦りながら何かを伝えたいみたいなんだけど、直接言わずに遠回しな言い方をしようとしてるみたいだ。
時間が掛かるのはアタリマエだろ?出産が初めてなら尚更、とても時間が掛かるらしいんだ。この部屋での待機中でも僕が側に居ることで安心した様子だった。分娩室にも僕がハルカの側に居ればリラックスするだろうから、悪いことも考える事なく集中出来るでしょ。
……色々って何さ?と椅子から前のめりでハルカの顔を覗き込んで。
「別に恥ずかしがらなくて良いだろ?挿れた場所から出てくるんだからそこは僕、良く見てるし」
『ばっか!』
「本当の事じゃん。挿れた所から生まれるなら真っ先に向かえてやるべきだね!」
『挿れる挿れる言うなっ!』
「じゃあ、マン『あーあー聴こえないっ!』」
分娩室に行く為の準備をしながら僕らのやり取りを聞いてくすくす笑うスタッフ。ハルカは真っ赤になって僕に反論する。痛がってたけどいつものこういう所は元気で良かった。
ハルカはちょっと体を起こして。あら、出産前でこんなにも元気なママだこと!
少し怒ったように並べる言葉はきっと彼女の羞恥心だ。
『さとるっあのねっ!?私が言いたいのは、何時間も力むんだから違うモンも出るシーンまでは見られたかねえって言いたいのっ!
だからここから先は私ひとりでも良いでしょ…?頑張って元気な子を産んでくるからさ?』
言わせんな恥ずかしいと真っ赤にヒステリックに言う彼女。なんだそんな事かー、とハルカにサムズアップをしておく。
大丈夫、その点につきましてはスパダリな僕は慣れてますので!