第32章 御三家
一年以内の色んな記憶を思い返す。
"悟さん"って呼んだらキスしてくるキス魔とか、付き合っていないのに寝床に忍び込む隣人の変態とか、真希に4の字固めされた時に体からぐきょとかいけない音を自身から奏でた事とか、狗巻が初めて「クッキー&クリーム」という単語を発して意味を考えてたら眠れない夜を過ごしたり、パンダが職質をされてるシーンを見てしまったり、悟が私の制服を着ていたり、狗巻が真希の制服を着ていたり、伏黒が道を聞かれたのをナンパと勘違いして全員で妨害(茶化し)に行ったり……。悟が私の制服をまた着ていたり、悟が私の上下下着を着た後ラピュタの序盤の親方のように筋肉の力で破壊したり……。
……ちょっと待って、頻度が高いんじゃない?私の制服なり下着なり勝手に着てんの。次やったら承知しねえからな?
この一年を振り返れば友情・努力・勝利的な汗と涙にまみれた青い春はなく、ロクな思い出が蘇ってこねえ……。
気を取り直しふふん、と胸の前で腕を組んだ。ここはせめて盛ってでももっともらしい感想を述べよう。
ううん、と小さく咳払いをして。一呼吸吸い込んだ後に唇を開く。
『──ここ、呪術高専では私、ハルカは多くを学び、多くを得』
"多くを得た"……そう続ける前に突然のチャイムに妨害された。
むふっ、と動き的に吹き出して笑った悟は手をパンパンと叩いて、チャイムが鳴る中で大きな声を上げる。
「はい終了ー!さあさあ、お待ちかねのアフターだよっ!荷物持ってお家へゴー!若人の青春はこれからだぜっ!
……で、チャイムが鳴り終わりましたけど、五条ハルカさん?さっきなんか言った?もっかいやり直す?」
そういう所ーっ!
目を見開き、ちょっと苛ついた後にどうしようも出来ない性格を思いながらチッ、と舌打ちをした。こういうのは言い直すのとか萎えんのっ!もうっ!
『……ワンモアチャンスは要らないかなー、まったく失礼な先生だよねー…地面に突き刺して田植えみたいにすんぞ??逆ディグダする~?』
「……痛そうだから止めてさしあげて??旦那さんを大事にしよう?」