第22章 キミは蜘蛛の巣に掛かった蝶
「体術の訓練中、脚をグギーってやっちゃいまして……それで私をメカ丸がここまで運んでくれたんです!なので、怪我というか捻ったのは右足ですね、」
『あっ、右脚……』
しゃがんで『失礼します』とズボンを捲くって見る……いいな、パンツタイプの制服!二年になったら私は三輪みたいなタイプの制服にカスタマイズしよう。それまでは悟プロデュースの制服を着続けるしかない。
三輪の脚を見てみれば少しだけ赤みを帯びてる。指先で擦り、見上げると「そこです」と三輪が。大きな怪我ってわけじゃないけれど、大きな怪我でもない状態の三輪を抱えて連れてくるとか結構、この呪骸…ってかロボのメカ丸、紳士なのでは?としゃがんだままにメカ丸を見上げた。
「……何か言いたそうダナ?」
『いえ、なんでもないですぅ……じゃあ、このまま治療しますねー、』
しゃがんだままに膝に手を当てる。
真剣な顔で頷く三輪。
「宜しくお願いします!」
『あ、終わりました』
「はっや!」
捲くったズボンの裾を直してデスク下に引っ込められた椅子を引いて座る。ポカンとした表情の三輪が椅子から立ち上がり、必死に私の腕を掴んだ。
「二週間といわずずっとここに滞在してて良いんですよっ!?自然に治るの待ちよりも絶対に呪術で治すこっちが良いじゃないですか、東京の方は治療関連の呪術師そんなに要らなくないですか!?
ほら、メカ丸も!一緒にお願いしておきましょう!」
「三輪、オイ……」
カシャ、と動きに合わせて軋むボディ。
三輪が掴んだのがペンを握った腕だから、記入が出来ん。必死な三輪と落ち着いてるであろうメカ丸を見て、もう一度三輪へと視線を移した。
『うーん……多分、今回の二週間といわず、定期的にこんな感じで派遣されるんじゃあないですかね…』
多分だよ、多分。
脳裏に浮かぶはここの学長。楽巌寺学長。学校生活一日目にしてやって来た学長は翌日もやって来ては些細な不調を治して貰っていった。なんとなく分かるのは学長にとってのお気に入りの施術師的な。
触れるだけで終わるマッサージ師じゃねえんだぞ?という文句やツッコミは、差し入れのどらやきで喉というか胃に押し込められている。