第22章 キミは蜘蛛の巣に掛かった蝶
「てかさ、ただでさえ格好良くて可愛い僕がなんで更に可愛いエプロンしてるかハルカ、分かる?」
よそっちゃえ、と深皿に肉じゃがを盛りつけていく悟。その質問に私は鼻で、へっ!と笑った。
『自称可愛いのコメントについては触れないとして。一回きりの今日のこのネタの為にパーティーグッズを買って着用はどうかと思うよ?』
カンカンカン、と鳴らしながら鍋を傾けて全てを深皿に移し替えた後に、シンクにゴト、と軽くなった鍋を置き、水を勢いよく注ぎながら私を振り向く悟。にっこにこな表情は嫌な予感しかしない。
「……生理終わったら裸エプロンでしようね~?」
『ウッワ!それはやだなー!』
そう考えれば一度きりのネタの為のエプロンじゃないって理解が出来て。むしろその為に買ってきたって事では?
水を止め、少し焦げ付いた鍋が浸されたのを確認する悟から、すっ…と離れるように冷蔵庫へと向かう。ドアを開ければ今朝まではなかった生鮮食品が買い足されてる。今日外食のち買い出しって言い出そうとしてたのが外に出なくて良くなってしまった。
おお…何から何までありがたい……ちょっと酢の物でも作っとこうかな…帰って全部任せっきりというサプライズもありがたいけれど、なんだか申し訳ないしさ。
『エプロンはどうかしてるけれど、夕飯と冷蔵庫内の買い物はありがと!』
悟を振り返って言えば、にこ、と笑う彼。材料を取り出してキッチンに立つと頭に手を乗せられてわしゃ、とひと撫でをされて。
「……奥さんが喜んでくれるからねー、他にもサプリメントも買い足して置いたからね、鉄分に亜鉛に葉酸、あとゴムも!このお返しは何日かしたらの裸エプロンでお願いするよ」
『それはちょっと……』
苦笑いする私に意地悪そうな笑みをした悟は私を引き寄せてそっと優しく口付けて。
耳元で「僕のお願い、利いてくれるよね?」とねっとりとした声で囁かれれば頷かざる負えなかった。