【FF15】 同じ夢を、あなたと (イグニス・R18)
第26章 執着
会計時、またしても同じ女性店員さん。
恨みがましい眼で「お会計は別々ですか」と尋ねられる。
「いや、まとめてで構わない」
一縷の望みをかけてワリカン男子で残念、とでもジャッジして自分の溜飲を下げようとしたのか。
ワリカン男子が良いか悪いかは別として、残念ながら彼はお金のやりとりする僅かな時間さえも惜しんで私と手を繋ぎたいって言ってくれる人なの。今日は…お城が近い場所柄繋いでいないけど。
お会計が終わり、出口へと向かう間中、背中に刺さる視線が痛い。密かに想いを寄せていた相手に既に特別な相手がいて歯痒い気持ちはわかるけれど、逆恨みはしないでほしい。
だって、私にとってのイグニスは代わりの効かない特別大切な人なのだから。
──ガチャリ。
イグニスが開けてくれた出入り口のドアの音に気持ちを切り替えようと前を向く。趣のあるすりガラスがはめ込まれたお店のドアを抜けた途端に夏の熱気が身体を包み、冷房と変な緊張で冷えていた身体から力がふっと抜けた気がした。
「グレイス」
日傘を開いて歩き出そうとしたところを声を掛けられ立ち止まれば、左手がイグニスの体温に包まれた。
「え…これ、」
「城の周りはともかく、大通りを外れたここなら良いだろう。日傘で顔も隠せることだしな」
「また、そうやって甘やかす…」
「可愛い恋人を甘やかして何が悪い」
そう言って笑うイグニスの顔は身長差と、夏の強い日差しのせいで濃い影が出来てよく見えなかった。焦れったい。
「じゃあ甘やかされついでにもう一つ甘えて良い?」
「もちろん」
「イグニスを独り占めしたい。今すぐ」