【FF15】 同じ夢を、あなたと (イグニス・R18)
第26章 執着
「昨日の朝作ってくれたフレンチトースト、美味しかったな。また今度作ってくれる?」
聞き耳を立てらているなら好都合。『朝を一緒に過ごす仲』なんだと暗に匂わせれば手元を狂わせたのか向こうからガチャンッ!! と大きな音が立った。
その音に最早本能レベルに刷り込まれた反応の良さでイグニスが振り返る。私やノクトお兄ちゃんを守る為に鍛え研ぎ澄まされたその無駄のない動きと戦意を喪失させる程他者を圧倒するその鋭い表情に不謹慎ながら惚れ惚れする。
視線を向けられた女性は、最初こそその剣幕に怯えるような反応を見せたが、自分に向けられた視線の意味を解さず照れたような顔をしてイグニスに微笑み返していた。
その表情はまさに恋する女性そのもので。
──やめて。私の大切なイグニスをそんな目で見ないで。
イグニスに大事にされている、愛されてる。そこに不安はないけれど、他の女性から色目を使われることも、それに対して牽制出来ないことに不満を抱いてしまうことは別問題。
恋敵はお城関係者だけじゃなくて、外にもいたのか…。昔から忙しそうにしてたから盲点だった。
自分の彼氏が色んな女性にアプローチされるのは、彼が魅力的であることの証明だから喜んでおけば良い…なんて、そんな心の余裕はまだない。
イグニスに気付かれないようにモヤモヤを吐き出すように細く息を吐き、落ち着かない指先がツ、と撫でたグラスからは大きな雫がテーブルに垂れた。その様は、表に出せない今の自分の心情を表しているようだった。