第16章 月と太陽
恐怖は感じないようになっているのに、ブワリと全身に冷や汗をかき、涙が出そうになった。
(せっかく会えたのに…私と向き合ってくれる人と…嫌だよ…っ!!!)
はギュッと目を瞑った----しかし、待てど暮らせど、背中やお尻に痛みはやってこない。目を開けると、は空中に、不自然に浮かんでいて、目の前のアーケオスも不自然に空中で止まっている。
「げ…ゲ、ン…」
「ゲンガー!」
地面に優しく降ろされたは、すぐに誰が助けてくれたのか理解した。アーケオスを追いかけてきたゲンガーは、サイコキネシスでとアーケオスの動きを止めてくれていた。
ゲンガーはアーケオスをから引き剥がすように、自分の方へ引き寄せていった。アーケオスは動かない体を必死にどうにかしようと、足掻こうとしている様子が見えた。
「ゲン…ゲー!!!」
お返しだと、ゲンガーは後ろにいるエメットをキッと睨みつけて、アーケオスをサイコキネシスで投げ飛ばした。
「ッ!!!」
エメットは避ける暇もなく、アーケオスを正面から受け止め、後ろへ吹き飛ばされてしまった。
「っん…とに……さい、あく…」
アーケオスは目を回して、立ち上がる気配がなく、エメットも背中を打ちつけ、起き上がる気配がない。
すると、アーケオスとエメットが浮き上がり、他のジムリーダー達のように空中に磔にされた。麻痺しているメタグロスは、なんとか力を振り絞ってサイコキネシスを使った。
エメットが磔にされると、ゲンガーもフラフラと地面に座り込み、大きなため息をついた。
「ゲンガー…」
「!大丈夫か!?」
「ダンデさん…」
心配で駆け寄ってきたダンデを、まだ地面に座り込んでいるはゆっくりと立ち上がった。パン、パンと、服についた汚れを払って、はいつものように見栄を浮かべた。
「大丈夫ですよ、ゲンガーが守って----」
「くれました」と、言う前に、ピシッと仮面の真ん中に亀裂が入った。
「……え?」
カランと、左側の仮面が地面に静かに落ちた。