第10章 チャンピオンカップ
ドラパルトは気絶しているドラピオンの顔を覗き込んでいた。レフリーが慌てて様子を見にフィールドに入って走って来た。
すると、カッと目を急に見開いたドラピオンは、目の前に飛んでいるドラパルトに素早く捕まえた。
「まだ意識があったのか!?」
「ドラピオン!無理しちゃ駄目だよ!!」
ドラピオンはガブリとドラパルトの尻尾に噛み付いた。
「ギィッ!?!?ルァアアアアア!!!!」
ドラパルトは痛みに悲鳴をあげ、ありったけの十万ボルトを放った。ドラパルトを捕まえている鋏と、噛み付いている口から強力な電撃を受け、ドラピオンは苦しそうに目を閉じた。
「やめて!ドラピオン!もういい!もういいよっ!!!」
悲痛な声をあげるの声が聞こえ、ドラピオンは電撃に耐えながらをチラリと見た。バトル開始前に見せた笑った顔からは程遠く、自分を心配している主人に、ドラピオンは噛み付いている尾を更に力を込めた。
(なんて執念だ、あのドラピオン…)
ダンデは冷静に装いながらも、背中にヒヤリと感じるものがあった。
わずかにドラピオンの噛む力と、つかんでいたハサミの力が弱ると、ドラパルトは慌ててドラピオンから離れた。
「大丈夫か、ドラパルト!」
「る、ルパァア…」
ドラパルトの尾には、ドラピオンの歯形が痛々しく、クッキリついていた。
(噛み砕く…か?)
「ドラピオン、戦闘不能!」
レフリーの声が聞こえると、ダンデの意識はドラピオンの方に向いた。ドラピオンは先ほどより焦げた色をしており、口から白い煙が漏れていた。
(---噛み付いていた尻尾から電気が入ったのか…)
「ドラピオン!!大丈夫!?」
が慌ててドラピオンに駆け寄った。プスプスと焦げた匂いがあたりに漂い、は顔を顰めながらドラピオンに手を当てた。
「どうしてそんなに無茶するの…」
ドラピオンは気絶して答えなかった。
「…あなただけじゃない…みんな、無茶しすぎだよ…」
はドラピオンをボールに戻した。
(ドラピオン、あなたの気持ち、ちゃんと受け取ったから!)
トレーナーが立つ位置に戻ると、は次のモンスターボールを手にした。