第3章 迷走
キバナに連れられてやって来たレストランは、少し道の入り組んだところにあり、オーナーとも仲がいいのか、案内された席は人目につきにくい場所だった。
(ここ・・・雑誌にも紹介されてない所だ・・・!)
はすぐにここが、キバナのプライベートで来ている所だとわかり、少しドキドキした。数日前も二人きりになったばっかりだというのに、このままでは心臓が持たないぞと、早くも心臓あたりを握りたくなった。
しかし両手は買い物袋で塞がっており、それもできず、音が漏れでてないか心配になり出した。
席につくと、店員からメニューをもらった。
キバナは「今日のオススメお願いするぜ」と簡単にオーナーに伝えると、はオススメと書いてあったキッシュをオーダーした。
ランチをオーダーした後、何から話せばいいのだろうとは目の前に座るキバナを見て悩み始めた。が、その悩みもキバナから口を開いてくれてすぐに解決した。
「そういえば、名前聞いてなかったな」
「え、そうでしたっけ?」
「そうだぜ、名乗ったの俺だけじゃん」
「えっと、っていいます///(名前呼んでもらえるとか今日こそ命日なの?全集中、耳澄ましの呼吸)」
「で、なんでこの間は逃げたんだ?」
「ふぇ?!」
てっきり名前を呼ばれると思っていたは、キバナの突然の、それも’聞かれたくない質問をされてビックリした。ニヤつきかけていた顔が、一瞬でサッと青くなり、そしてダンデのことを思い出して赤くなったりした。
「そそ、それは、えっと、あの、あのですね、あれです」
(すげー慌ててやがる)
青くなったり赤くなったり、はどこから話せばいいかわからなかったが、ダンデに手を握られて逃げたなどど、口が裂けても言いたくなかった。