第3章 迷走
「ありがとうございました!ぜひまた来てください!」
「は、はい・・・」
すごく嬉しそうなお店の店員の声を受けながら、はお店を出た。両手にはパンパンの袋を持ち、気恥ずかしい気持ちでいっぱいだった。
(品揃え良過ぎてつい買い過ぎちゃった)
それでもは心が軽くなったような気分で元来た道を歩いた。
雨は来る前より少しだけ弱くなっており、この雨もそう長くは続かないんだろうなと思った。
そしてちょうど角を曲がろうとした時、角から人が来ると知らず、相手も同じくそうだったようで、はもう少しで相手とぶつかりそうになった。
「わっ、すみません!」
「お、悪い!大丈夫か?」
すんでの所で避けることがで、二人は同時に相手を気遣う言葉を掛け合うと、お互いの顔を見て目が大きく開いた。
「「あ」」
「キバナ様・・・」
「お前この間の・・・」
まさかぶつかりそうになった相手が、つい数日前に自分とタクシーに相乗りしたとは思っておらず、は突然のキバナの登場に心拍数が跳ねがった。
が、そのつい数日前に自分がローズタワーからものすごい勢いで走り逃げて来たのを、キバナの制止の言葉も聞かず振り払ったことを思い出し、サァと血の気が引き始めた。
「イイオ天気デスネ、デハ」
「おいちょっと待て」
クルリとキバナに背中を向け、先ほど歩いて来た道に戻ろうとすると、キバナの制止の声にビクっとは体を震わせて止まった。
(あ、なんか振り返ったらヤバイかも…)
「この間はよぉくもこの俺さまを放っておいて帰ってくれたよなぁ?」
(根に持つタイプ……のキバナ様も素敵だけど!だけどちょっと怖いーーーー!!!!)
「俺さまこれから昼飯食べに行くんだ、行くよな?」
どこのジャイアンだよとは思ったが、自分の背後にいる相手からは、答えがYESかはいの選択肢しかないと圧力を感じた。
そしては答えた。
「はい、喜んで行きマス…」
(嬉しいはずなのになんか私の求めてたものとちがーう!!!!涙)