第36章 聞こえない音 お相手:宇髄天元
自分の大事な部分の辺りに
手を滑り込まされて
みくりがビクッと
驚いたようにして身体を跳ねさせると
スッとそこから宇髄の手が離れて行って
ちゅうとこめかみに口付けを落とされて
「じゃあ、今日はここまでな」
そう言って身体を開放されてしまって
「明日、いつも時間に来るわ…。
あ、そそ、あのメイドにさ
風呂、用意しとけって言ってくんね?」
宇髄はそう言うと
じゃあなと小さく手を振って
そのまま去って行ってしまった
いつの間にか15分から始まった
毎日の逢瀬は
知らぬ内に 30分となり
カレンダーの日付が
12月の終わりの方へ来る頃には
1時間…に近くなっていた
確実に私の病気は進行していて
今は 彼に肩を借りないと
自分で歩く事も出来なくなっていて
かろうじて 指に痺れを感じるが
たどたどしくにはピアノを弾く事が出来ていた
足が思う様に動かなくなってたから
ペダルの操作も難しくなって居て
宇髄がそれに気が付くと
みくりの身体を自分の足の間に
挟み込む様にして座って
「緊張しちまうか?俺は忍だ
気配は殺せる、俺の事は自分の影か
なんかだと思え、いいな?
天元様がお前の足…になってやるよ」
そう言って フッと
身体が密着している状態なのに
姿は目で見えるのに
彼の気配が消えて
見えている映像すらが
存在が怪しいとさえ思えて
やはり 天元さんは
大魔法使いさんなんだと
そんな風に感じてしまいながらも
促されるままに 更に重く感じる様になった
鍵盤を指で押し込む様にして
演奏を始めると
驚かされてしまった
完璧だったからだ
自分の足で踏んでいるかの様に
タイミングも力の加減も
バッチリで…
自分の足の様にすらも感じてしまって
自然と涙が零れてしまっていた
「天…元さ、んッ、ありがと…、う
ございます、私…、弾けてる…」
「ああ、弾けてる弾けてる。
ちゃんと聞こえてるよ、お前の音」
ピアノの旋律に 重なって行くのが
宇髄の耳には聞こえていた
コイツ自身の 音が重なって行く
喜びの 音…だ
こんな状態になって
自分が弱って行って
衰弱しているのを感じてるのに
今を… 喜んでいる 音が…する…んだな
「俺、やっぱお前のピアノ好きだわ」