第36章 聞こえない音 お相手:宇髄天元
いつの間にか20が
30分の逢瀬になっていて
その時間だけは私に
この身体の
病気の事を忘れさせてくれる時間
脳みそを苛まれる熱も
ビリビリと身体を震わせる痺れも
彼に 天元さんに口付けられていると
それが 口付けの所為なのか
病気のせいなのか分からなくなるから
「こうされるの、好きな感じ?
随分と、慣れて来た…感じすっけど」
後ろからギュッとその
大きな体に包み込まれて
抱きしめられると安心する
「じゃあ、もうちょっと先進んどく?
大人の世界…、知りてぇんだろ?」
そう耳元で甘い声で囁かれると
その声がみくりの鼓膜を震わせる
半開きになった唇の隙間から漏れる
吐息が熱を帯びるのを感じる
身体…熱い…熱が上がってるみたい…
「んっ、…でも、熱が…出ちゃうかも…ッ」
「何?身体…熱い感じでもしてんの?
それ、熱じゃねぇから。お前の
女の部分が、俺に反応してるだーけ。
むしろ、そうなって貰わねぇと
何にも、する事も出来ねぇし」
項を隠している
みくりの髪を除けると
ちゅぅと宇髄が項に口付けを落とした
ビリビリとした痺れが
口付けられた項からして
驚いてしまった
「ひゃあっ」
「ん?どうした?…んな、声出して。
感じてんなら、もっとそんな
ゴキブリでも出た様な声じゃなくて
色気のある声で、啼かねぇと。
男はそこ気になんねぇぞ?みくり」
むぅっと宇髄のその言葉に
みくりが口を尖らせて
ポカポカと宇髄の胸を叩いた
時々 ちょっといやらしい事をしては
私に色気がないとからかってくる
どこまで 本気で
どこまで 冗談なのか
からかわれるばかりで 分からない
でも さっき口付けられた項が
そこだけジンジンと熱を帯びて熱い
「……っ」
何かに堪え切れなくなった様に
みくりが小さく声を漏らして
スルッと長い指を顎に添えられて
クイッと顎を持ち上げられてしまった
「どした?んな、顔して。
一丁前に、感じちまったか?」
カアッと俺の言葉に
顔を真っ赤にしちゃって
言い訳をしてくる姿を見るのは
悪かねぇし むしろ…
もっと先をと…欲が湧く
もっと 先を した所で
情が湧く…だけなのに…な
何で俺は こんな事しちまってんだか
後悔する前に 引けばいい…
今なら…間に合う