第33章 絶対君主のお気に入り お相手:煉獄杏寿郎 Rー15
名前を……呼んで欲しいと
そう 望まれているのは わかる
スルタンと言う呼ばれ方ではなくて
彼と言う個を示す呼び方で
呼んで欲しいとそう
彼が私に言って来て
彼がさっき 私に言った
名前……を贈りたいと言う言葉の
意味する所は…
彼の 妃になると言う事であって
スルタンが妃に名前を与えるのは
他の誰にも 元の名を呼ばせない為……だ
今までの慣れ親しんだ
自分の名を捨てて
彼に スルタンに全てを捧げると言う事を
受け入れた証…
彼の付けた名を受け入れれば
実の血の繋がりのある家族でさえ
元の名で呼ぶ事は許されない
妃を元の名で呼ぶ事が許されるのは
彼のみ…で
その名の縛りが
より深く… 契約として深く
お互いを縛り合う物なのだ……
そしてそれは…その
今 彼が求めている事も
然りで……
彼を名で呼ぶ事を 許されているのは
例え 彼の妃であろうとも
ふたりだけの時…
つまりは 夜の床の中でのみ……
「あの……、スルタン様……」
いや… でも彼は
最初の夜に 私に
呼び方を改めろと言った……けど
あの時は…そんなつもりだったのかとか
それに 今はどんなつもりなのか…とか
後……それから
距離はいつの間に詰められたのかとか……
彼の香りが鼻を掠める
片手で手首を掴まれて
逃げられない様に反対の腕を
腰に回されてしまって
「まだ……、
気が付かないふりをするつもりか?」
先程の陰陽和合の話を思い出す
人は…不完全が故に…
自分の完全を求めているのだと
そして……
目の前の杏寿郎から
溢れるばかりの 陽の気が……
滲み出ているのを感じるから
その燃え盛る炎の様な陽の気を
自分の中に……取り込みたいと言う
ある意味 渇きにも似た
飢えを……今まで 感じた事もない様な
そんな 感情を感じる
自分でも なんでこうなってしまうのか
分からないのに…
自分が酷く 求めてしまって居るのを
感じてしまって
ゴクリとみくりが喉を鳴らした
「欲しくは…ないか?俺が。
君は…俺が……、欲しいと。
そう…望んでるんじゃ…、ないのか?
みくり。俺が君を…求めている様に…」