第33章 絶対君主のお気に入り お相手:煉獄杏寿郎 Rー15
「橘さん…、こちらの蔵書の中に
毒物についての蔵書はあるかしら?
銀に反応しない、無味無臭の…毒について」
「毒蜘蛛と毒物…ですか。
なかなかに物騒な本がご入用な様だ」
「後宮らしいと言って頂けませんこと?
明日は処か、今日は我が身……ですので。」
「スルタンより、貴方がこちらに毒物の
ついての本を閲覧希望しに来られれば
禁書の閲覧のご許可と、ある場所への
案内をと承っております…」
そう言って懐から取り出したカギを
みくりの方へ見せた
書庫の中の本棚をスライドさせて
その奥に隠すように設置されている
戸にカギを差し込むとガチャと
鈍い音を立てて戸が開く
その奥の重工な作りの
蔵の様になった部屋に
閲覧が禁じられている
禁書が保管されていた
その中からお目当ての本を
みくりが手に取ると
その中身をパラパラとめくる
「銀食器の事といい…、
この禁書の事と言い…、
私は彼の……スルタン様の趣向にでも
付き合わされているみたいな気分だわ」
「しかし、私はこの五年で
王妃様が毒物にまつわる禁書を
お読みになられるお姿は初めて
拝見致しましたが…」
「どうせ…、貴方が私を案内して
って言いつかっているのは
後宮の医師の所でしょう?」
「スルタンもスルタンであられるが、
貴方様もなかなかに
貴方様であられる様だ。
もう、噂が回っておりますよ?
スルタンが2晩連続で
貴方に夜伽を命じられたと」
そのまま橘に案内されて
後宮の医師の元へ連れて行かれた
医師にもあらかじめ
話が付いている様で
私が何かを言うまでもなく
必要そうな薬をくれた
隣から橘がこそっと
「それの出番がないといいですね」
「これの出番は今晩のお夕飯でしょうし?
それに橘さん、これを使うのは
私ではありません事でしてよ?
後、橘さん。これとは関係ないのだけど。
囲碁に関する蔵書は
どれぐらいありますか?」
自分が暗殺されるかも知れないと
言う時に このお妃様は
囲碁の本が読みたいとご所望され
一心不乱に その……さっきまでの
毒蜘蛛や毒薬の本を見ている時とは
まるで別人の様に 食い入る様にして
その本を見ていて
時折頭を抱えては
うーんと唸り声は上げていて
やはり 新しい王妃様は
今までの王妃様とは違うと
そういたく実感していた
