第11章 ラングラー
ー古森sideー
『スープに… 波に追いつかれても慌てないで、パドリングを続けてね』
海底を蹴ってボードの上に腹這いになって岸の方に向かうってのを、
波に押されるって感覚を身体が覚えるまで何度もやって。
じゃあ次はパドリングもやろう、って。
それでそう、言われてたのに、波に追い付かれると結構焦った。
焦ってパドリングが止まっちゃって、結果波に置いて行かれて。
こんな小さな波を足のつくとこでやっててもテンパったりするんだから、
深いとこであんな風に乗る人たちすげーな〜と思うしそれに、
スープって呼ばれるここで、練習する意味がよくわかった。
舐めてかかったら、即死ぬ、これ。
それにパドリングってそれなりに鍛えてる俺でもしんどい。
やっぱ水相手に体動かすのってすげー負荷かかるなー。
研磨くんはまだパドリング付きでトライしてなくって、
何度も波を見送ってる。
それで、今やっと、
「あ、研磨くんいくんやな」
研磨くんがボードに飛び乗った。
すぐに周りを見て、それからパドリングを始める。
スープに追いつかれるまでに余裕があるように思った。
そっか、そりゃそうだよな、速度を上げてかないと。
その後追いつかれても落ち着いた様子でパドリングし続けて、
すーっとスープの先に研磨くんが現れる。
波に押されるように、速度もあるまま滑らかにすーって。
「…なにこれ」
『………』
「気持ちいい」
『うん、うん!』
研磨くんは穂波ちゃんに話しかけてる。
どうも楽しかったみたい。そんな表情をしてる。
そりゃそうだよね、あんな風にすーっと乗れたら。
俺はまだまだだけど、それでも楽しいんだから。