第7章 su casa
「はい、これは穂波にな」
周平が軽々と持っているように見えた箱を両手で受け取ると重たくって。
コントみたいによろめいた。
「…ドリフ」
「…ふ 笑」
開けると、クイジナートのフードプロセッサーとストウブのココットラウンド。
色も大きさも… 最初に買うならって思ってたやつ…
「うわ、泣いた」
『周平の馬鹿』
ドンピシャで、好みどころか全てを熟知したみたいなのくれるのずるい。
「なんかお前ら、すぐには買わなそうじゃん。電化製品リストにも入ってなかったし。
あーよかった、読みが当たって。やっぱ俺ってハイスペック」
「それって自分の知らないとこで言われてるくらいでちょうどいい言葉じゃね?」
「いやもはや俺の場合は…」
周平はクロさんと相変わらずで会話を続けて。
わたしはなんだか今までの周平との日々を思い出して泣けた。
フードプロセッサーは、かなりの頻度で使ってきた。実家で。
でもいざ、必要ですか?と問うと、
いつかは必要ですが、なくても何とかなります。という答えが返ってくる。
あ、自分の中での質疑応答。
ストウブの鍋だってそうだ。
必要ですか?と問うと、
美味しさが全然違うし一生ものだし、いつかは欲しいですが、今必要ではありません。 って。
わたしが贈る際に考える、プレゼントの醍醐味みたいなものを、
圧縮して投げつけられたような気分。
『…うっ……』
「…笑 穂波どうした? 打撃入ったの?笑」
『…うん 思いっきり』
「…よかったね」
『うん』
打撃が思いっきり入って良かったねって、頓珍漢な会話だけど。
ちゃんと意味をなしている。
何もかもが多すぎず少なすぎない、ちょうどいい塩梅の研磨くんと。
ここでまずは数ヶ月だけど、日々を織りなせるのかと思うと更なる打撃に涙が滲んだ。