第6章 リレー
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「穂波、早めに祭りいかない?」
『ん? あ、うん! 夕方ごろなら比較的空いてるだろしいいかも』
それにあの、お祭り始まった頃のあの感じは、
なんとも風情がある。
これから賑わうんだからわくわくするはずなのに、
なぜか胸がきゅうとするんだ。
懐かしいような、よくわからない、何かが胸を締め付ける。
『…浴衣に着替える?』
「うん、着せて」
『あ、汗… 流す?』
「流さないと浴衣、汚れる?」
『へ? ううん、浴衣は当たり前に着てて汗かくものだし、すぐ洗えるし全然。
ただ着替える前にさっぱりしたいかなってだけだよ』
「…じゃあいい。 浴衣の帯使ってもいい?」
『うん? いいよ? ん? 何に?』
研磨くんに着てもらう浴衣と一緒に置いてある帯を手に取ると、
まとめるために結ばれた結び目をほどきながらわたしの方に向かってくる。
それからわたしの背後に回って腕と身体を一緒にぐるぐるしてから、
手首を後ろできゅきゅっと縛った。
「膝つける?」
腕の自由を奪っておいて、涼しい声でなんともない調子で、研磨くんが言う。
『床に?』
「うん、そうだけど?」
『………』
え、それ以外に何があるの?
無駄なこと聞いてこないで、ほらさっさと言われた通りにしなよ。
だなんて、思ってないだろうし、言わないけど…
勝手にね、研磨くんの短い言葉に脳内で意訳をつけてしまう。
そして、勝手に興奮してしまう。
ゆっくりと腰を落とし膝を曲げ、床に膝をつく。
「…ん 別に何も考えてないんだけど」
『………』
「穂波は、どうしたい?」
『え…』
後ろにいた研磨くんが前に来てしゃがんで、首をかしげる。
ここにきてこんな状況で、かわいく聞くのとか…
ずるい、ずるい、ずるい。
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