第6章 リレー
(なんか飄々と普通に言ってるけどさ、穂波だけが欲しいってさ)
(あれだよな、君だけが欲しいってやつだよな。なかなか言えるもんじゃねーしそれ)
2人があからさまにこそこそ話してる。
手を当てて口を隠して耳元で。
「…なに?」
「いや研磨の前で内緒話なんて初めてしたわ」
「なんで?」
「結構周りの目が気になるやつだったんだよ、研磨は昔。
それでその流れでかな、内緒話とか冗談でもしないくせがついてたなーっつって今思った」
「へー!俺初めて会った時から、めっちゃいちゃついてたからな!
学校で腰抱いて、おれの、とか言ってきて、それから普通にチューされたし目の前で」
「あー!あったな、それ! 昼休みにな、人すっげー集まってる中で」
「そうそう〜 ひっさびさに穂波に会って、
あーワンチャンこのまま抱けるかな〜とか思ってたんだけど」
「…で?」
「え?」
「好きじゃない人も周平は抱くの?」
「それはまぁ、時と場合により、いかせていただきますけども」
「……」
「好きじゃない、わけじゃなくね?好きは好きだけど、ってやつだよ」
「ふーん」
「身体の相性がいいから、たまに会うと重ねる。とか? あとまぁ、流れでとか? 普通にあるけど」
「へぇ」
「普通にあんだ」
「んー残念ながらそこは硬派にはできてねーのな」
「周平に硬派を求めてないからダイジョーブ」
「おい!」
「…でも、それ彼氏いる子にはしないんでしょ」
「まーね、俺も彼女いたらそんなことしねーし」
「ふーん」
「いやでも周平、こんなこと言うのも何だけど結構穂波ちゃんに一途な感じ受けるけどな」
「いや鉄朗ほんと、ここでそんなこと言うのもなんですよ!彼氏の目前で!ひどい!」
「ははっ わりぃわりぃ まぁこの際、ってことで」
「でも鉄朗だって結構グッときたんじゃねーの?穂波ってそういうやつじゃん。
なんていうか、生粋の天然たらし」
「いやマジでそれ。俺もガチで言ったことあるから」
「なにを?」
「…このまま俺のものになる?って」
「マジか!笑 やべー、鉄朗かっけーじゃん!笑」
「やめろ、傷がえぐられる…」
「傷なんてないくせに」
「そうなんだよなー、傷がねーんだよなー、不思議と」