第16章 釘
ー侑sideー
『…泊まっていっていいよって』
…え、は、…はぁ!?
「…あ、え、あ …そうなん? そらよかった …は?」
そらよかった、ってなんやし。
なんの話やねん。
『うん、よかった。 それで…』
「………」
『んと、連絡待ってるって伝えといてって』
ほんでなんでこの子はまた、こんな顔しとんの?
ちょっと別室で彼氏にイイとこ触られてよがってました、
続きはあとでねって言われました、みたいなエロい顔。
「…あ、ぉん。 連絡待ってる、か」
『うん』
「は、なんで、どういうこと!?」
怖いんやけど!
『…んと、』
「…あ、俺が言ったんか」
『うん』
そうやった、俺からもあとで連絡するって伝えてって言うたやん。
このタイミングでの「研磨くんが連絡待ってる」が
違う意味でパワーワードすぎて忘れとった。
…いやだから、やとしても、なんで待ってんねん。
泊まったらあかんからの待っとるはもう、お叱りやん。罵倒やん。
泊まってってもええけど、連絡待っとるは…
…こわ、どーゆー意味!?
「研磨くんてほんま読めん…ちょっと電話する。
そこんとこ座ってしてもええ?」
『うん、もちろん。今日ちょっと風が涼しいからそこにある膝掛け持っていって?』
外に出たとこにある椅子にかけて電話しよう思った。
したら室内のソファの横にある籠に丸めて入っとるひざかけを持っていって、って。
自分でどうぞとってね、いう感じやったけど
結局てこてこ歩いて取りに行って、はい。って渡してくれる。
触っただけで上質なんがわかる、コットン素材の大判の膝掛け。
グレーの地にもう一色別の色で模様が織られとる。
…なんか安心するわ、さらさらしてふわふわしたこの感じ。