第16章 釘
ー穂波sideー
「お、ほんなら炭酸水もらってもええ?」
『うん、もちろん。ライムしぼる?』
「しぼるー」
侑くんに炭酸水を渡して
ささっと今してることをキリのいいとこまで仕上げて。
わたしもシャワーを浴びてこよっと。
『…何かテレビでつける?』
「ううん、えーよ。Wi-Fi使ってもええ?」
『うん、もちろん』
「ていうか、この服!こんなええもん借りてええの?」
『うん、それ全部お兄ちゃんがもらったもので。
ここに泊まりにくる人とか困ってる人がいたら渡してっていうとこに入ってる服たち』
「…え、ここみんなスポンサーなん?」
『うん?アパレルだけどジャンル違うでしょ、だからかな』
「こんなカジュアルにハイブランド着れるなんて贅沢や…」
『ふふ、確かに。カジュアルに着れるのは贅沢だ。
迷惑じゃなければもらってくれたらお兄ちゃんは喜ぶと思う』
「ほんまに? ええの!?」
侑くんって賢くて無邪気でとてもかわいいなぁ。
さぁさお腹も空いてきたし、シャワーを浴びましょ。
・
・
・
シャワーを浴びて、
どうせすぐパジャマに着替えるしばさっと楽チンなカットソー地のワンピースを着て、
髪の毛にはタオルを巻いて、侑くんの脱いだ服を手に廊下に出るとちょうどトイレから出てきた侑くん。
「…あ、そやそれ。忘れとった。なんか袋もらってもええ?」
『うん、でもここで洗ってく?回すの明日でもよければ』
「ええの? ほんならそうする。 また会えるってことやんな」
『うん、え、今日、泊まってかないの?』
「うん、は!?泊まって…か… 泊まってか… 泊まってってもええのん?」
『…え? あ、だめ…かな? ホテルとってるのに…ね』
ホテルまで送ってくまでを予定にいれて誘ったのに。
気付いたら侑くんが今日は泊まってくんだって思い込んで過ごしてた。
こわいこわい。
「そんなん、ええし。泊まってええなら泊まってく」
『…あ、うん? あれ?』
「もう遅いで」
『………』
「気付くん、遅い。俺ら二人きりやで? …ワンピースかわいい」
そう言いながら、
また鋭く力強いあの、目をして、侑くんがじりじりと歩み寄ってくる。