第5章 あの時…
電車内は割と混んでいたので入口付近に4人固まって乗り込んだ。
先程のことがあったので、4人とも黙ったまま。
空気が悪くなってしまっているようだ。
…来ない方が良かったのかもしれない。
そんな事を思い始めていた時、窓の外を見ていた花里が急にくるっと振り向き、後ろに居た俺を見上げた。
「冨岡さんっ、見えてきましたよ!あそこです!」
まだ少し遠いが、花里の指差す先に水族館の看板が見えて来た。
「あともう少しだな」
「はい、楽しみですねっ」
わくわくが止まらないようだ。
嬉しそうにする花里を見て、やっぱり来て良かったと思い直した。
駅を降りるとほぼ目の前が水族館だった。
「貴様の分は無い」と言われた切符を窓口で買い、入り口に入った所で花里が足を止める。
「蜜璃ちゃん、ちょっと…」
「柚葉ちゃんどうしたの?…え?なになに?」
来い来いと手招きし、そのまま甘露寺を連れて俺たちから離れて行ってしまった。
残されてしまった俺達。
少々気まずい空気が漂う。
チラッと伊黒を見やれば、フンッとそっぽを向かれる。
あぁ分かっていたとも。
一体俺はどこまで嫌われれば良いのやら。
はぁ…。
暫くすると、何やら話し込んでいた2人がトコトコと戻ってきた。
「お待たせしました!小芭内さん、冨岡さん、私たちから2人に提案があるの!」
「提案?」
伊黒は首を傾げる。
一体何を言い渡されるのだろうか。
甘露寺は時々突拍子も無いことを言ってのけるので、正直安心して聞けない。
無理難題でなければいいが…
不安を抱きながら甘露寺の言葉を待った。
「提案って言うのはね……、今から二手に分かれて回りましょ!」
「二手に分かれる?」
「ほぉ」
意外と普通だった。