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君に出逢えて、恋をして 【鬼滅の刃 冨岡義勇】

第1章 出逢い



「何ですか!誰ですか!ちょっと離していただけますか⁈」


「イヤー!」と叫びながら、怯えた顔で俺の手を振り払おうと掴んだ腕をブンブン振り回す。

凄い力だ。
だが俺は負けない。
この誤解を解くまでは。

しかし半分パニック状態の人間に何と言えば納得するのだろうか。

頭の中で必死に言葉を探した結果、やっと出たのが


「俺は怪しい者ではない」


…益々怪しくなってしまった。

彼女の顔は顔面蒼白。
俺の台詞は怯えた彼女に追い討ちをかける結果となった。

…このままでは埒があかない。
そう思った俺は、自分のポケットからあるものを取り出し、掴んでいた彼女の腕側の手のひらにそれを押し付け持たせた。


「ぎゃー!今度はなにぃー⁈」

「だだのハンカチだ」

「はんっ…か、ち…?」

「必要ではないか?」

「え…なんで…?」


ハンカチを持たされた彼女は、わけが分からないといった様子でハンカチと俺を交互に見つめる。


「さっき、…泣いていただろう?」


俺がそう言うと、なぜ分かったんだとでも言うように、彼女は目を見開いた。


「涙は全部出し切ったか?」

「っ…」


見たところ既に涙は引っ込んでいるように見えるのだが、さっき俺が中途半端に登場してしまったせいで、まだ気持ちの整理がついていないのではないかと思ったのだ。

少し戸惑っている様子だったが、暫くすると彼女は伏目がちに首を横に振った。
その目にはだんだんと涙が溜まっていく。
しかし、その涙を流そうとはせず、唇を噛み締め必死に耐えていた。


「我慢しなくていい」


そう言って促してはみるが、それでも彼女は首をぶんぶんと振るだけで涙を流す事を拒む。
なかなか強情だ。
まぁよく知りもしない奴の前でなんか泣けるはずもないだろう。
いっその事俺がここから立ち去った方が良いのではないだろうかと思ったのだが、こんな今にも泣き出しそうなこの子を置いていくというのは、それはそれであまりにも薄情ではないだろうか。

それならば、こうすればどうだろうかと…

俯く彼女の頭の後ろに手を添えて、引き寄せそのままそっと自分の胸に押し付けた。





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