第3章 再会
「そして今更なんですが…突然来てごめんなさい!迷惑じゃなかったですか?」
すまなそうにこちらを窺う花里。
予定はあったが錆兎も怒ってはいなかったし、変更可能なものだったので、こちらは全く問題なしだ。
「そんな事はない」
むしろ何故だか俺は妙に浮かれている。
というのは黙っておこう。
「良かった!あの、今日これを返そうと思って」
花里は鞄の中をゴソゴソと漁り、パッと何かを取り出した。
「それは、あの時のハンカチか?」
こくっと頷く花里。
やはりこれを返しに来たのか。
こんな暑い中これだけの為に…と、更に申し訳なく思った。
「遅くなっちゃってごめんなさい」
「わざわざすまない。捨ててくれても良かったのだが」
「ぇえ!ダメです!まだ使えるのに!」
物は大切にしましょうと怒られてしまった。
そうだな、大切にしよう。
「どうぞ!」と渡された俺のハンカチを、有り難く頂戴する。
「ありがとう。また使おうと思う」
「はい、また使ってあげてください」
にこにことしている花里を見て、こちらも釣られて頬が緩む。
そして暫し沈黙。
もしや…
「冨岡さん」
「なんだ」
「……私の用事、終わっちゃいました」
だと思った。
「どうする?もう帰るか?」
「んー…」
少し考えてから、花里が口を開いた。
「冨岡さんが嫌じゃなければ、…もう少しお話ししていってもいいですか?」
「あぁ、俺もそうしたいと思っていたところだ」
俺がそう言うと、ぱぁっと花が咲いたように笑顔になった。
俺と話せるのがそんなに嬉しいのだろうか。
少々こそばゆいな。
それと同時に、「良かった!」と嬉しそうにする姿が、正直可愛いと思った。
おかしいだろうか。
胸の奥かもどかしいような、なんとも言えない感情が込み上げてきそうで…
なんだろうかこれは。
…
考えても今の俺には分からなそうだ。
それに、答えに行き着いてしまったら何かが始まってしまいそうだと思ったので、ここはもう何事もなかったかのように話を続ける事にした。