第9章 生命と選択
「藍野さん、どうぞ」
卯の花に呼ばれて、美穂子は慌てて部屋へと入る。
どうやら、診察結果が出たらしい。
「お待たせしてしまって、ごめんなさいね」
「いえ。こちらこそ突然で」
美穂子が頭を下げると、卯の花はにっこりと微笑んで首を振った。
「怪我や病気は突然起こるものですから、その辺は気にしないで大丈夫ですよ」
四番隊の仕事のほとんどは突発業務だ。
入院していたりする患者すらも、容態が急変することだっていくらでもある。
ましてや、死神という仕事柄上…毎日どこかの隊でけが人は出続ける。
それを少しでも迅速に徹底した看護ができるかが、四番隊の特務ともいえるのだ。
美穂子は卯の花の言葉に少しホッとしながら、勧められた椅子に腰掛けた。
「藍野さん、おめでとうございます、ご懐妊ですよ」
「え…」
卯ノ花はにっこりと微笑んだ。
美穂子は、目をぱちくりさせた。
今―…なんと言われたのだろうか。
「―……妊娠、ってことですか?」
震えそうになる言葉を懸命に耐えて、卯の花に問うと卯の花はとても嬉しそうにうなずいて見せた。
「えぇ、三か月と言ったところでしょうかね。お相手とは、しっかり話されたほうがいいですね」
「―――…はい」
卯の花の反応とは真逆に、美穂子は、目の前が真っ白になった。
その様子を卯ノ花はじっと見つめた。