第2章 世界反転
尸魂界 side
その日、月明かりがとても穏やかで。
白哉は風呂から上がると、夜着の上に羽織来て夜の散歩をすることにした。
朽木の敷地は広い。
屋敷の裏に広がる林の奥には、伝説の泉と呼ばれる小型の水源がある。
嘗ては湧水程度だったものが徐々に大きくなり、だいぶ前の当主が少し見た目をいじったことで泉となったらしい。
以前、十二番隊が伝説の泉と知って水質調査を申し出てきたことがあった。
その時にわかったことは、湧いてくる水は透明度が高く、微生物らしきものがほとんど含まれていないそうだ。
それ以外は特に特化したものがなかったと落胆していた十二番隊を思い出した。
それはそうだろう、と白哉は思う。
コポコポと小さな音を立てて溢れる泉は、近くで取れた珍しい淡い青い石で神秘的な雰囲気で囲まれている。
けれど、それは当時の当主の演出に過ぎない。
伝説と言うのもひどく曖昧で、幼い頃に聞いた白哉も嘘だと思ったほどだ。
けれど、白哉は月明かりの綺麗な夜に、この泉を眺めるのが好きだった。
月明かりに照らされた泉は、とても綺麗なのだ。
白哉は泉の傍らに立つと、月を眺めた。
満月の月は非常に明るい。
けれど―…なぜだろう。
それがすごく穏やかで優しい光のような気がして。
白哉は自然と目を細めた。