第8章 運命の歯車が動き出す
他愛のない話をしながら終えた朝食の後、いつものように美穂子は白哉の一歩後ろをゆっくりとついていく。
白哉は美穂子を連れて歩く時、歩調を少し意識的にゆっくりと歩いてくれる。
そんなさりげないやさしさが、美穂子の心をほっこりとさせてくれるのだ。
「そういえば、白哉。最近―…誰かに呼ばれる夢を見るの」
「何?」
六番隊へ向かいながら、ふと思い出した夢を白哉に言うと白哉の足が止まった。
くるりと向きを変えて美穂子のほうを見る白哉に、美穂子は首を傾げた。
「白哉?」
「―…その夢、詳しく教えろ」
真剣な面持ちの白哉に、美穂子は目をぱちくりさせた。
「く、詳しくって言っても…そんな内容があるわけじゃないんだよ?私は水の中にいて、遠くで声が聞こえるんだけど―…雑音が混じってて聞き取れなくて」
ただ…それだけの夢だから、と笑いながらいう美穂子に白哉は眉をひそめた。
「それは、いつからだ」
「えーっと、ここ最近…かなぁ?毎日見るわけじゃないけど、結構頻繁に…似たような夢は見るよ」
美穂子はうーん、と考えながらいう。
毎日ではない。
けれど、一度や二度ではないはずだ。
いつも肝心な声はまともに聞き取れないけれど、これだけ頻繁だと少し気になってしまって白哉に話しただけなのだ。