第15章 蓮華
まきをが、狛治の横に立ち、その言葉に続いた。
「そうだよ!あんたがそんな顔してる間にも、あの子は頑張ってるんだ!ここでへたり込んで、何になるんだよ!?」
そして、須磨が泣きながら叫んだ。
「そうだそうだ!泣きたいのは、きっと桜華ちゃんの方だよ!でも、あの子はきっと、狛治さんが迎えに来てくれるって信じてる!あんたが、信じてあげなくて、どうするのさ!」
三人の妻の言葉が、狛治の心に深く突き刺さる。彼は、肖像画をもう一度見つめた。そこには、絶望と悲しみを湛えながらも、強く、そして気高く微笑む桜華の姿があった。
「…ああ…そうだな…」
狛治は、深く、ゆっくりと呼吸を整えた。
「俺は…もう、過去の罪人じゃない。お前らもいる。…迎えに........行ってくる」
彼の瞳に、再び強い光が宿る。
それは、絶望から生まれたものではない。
愛と決意に満ちた、揺るぎない光だった。
「…杏寿郎。連絡を頼む。今から向かう。子どもたちを…頼んでいいか」
「そのために来ているのだ。御子息たちは必ずお守りする。行ってくるといい」
「感謝する」
「天元。万が一のときは」
「…ったりめぇだ。胡蝶カナエも姫さんも迎えに行くぞ」
「恩に着る」
狛治はその言葉を聞いて走り出す。
宇髄もそれに続いた。
向かう最中、桜華が約束してきた言葉を思い出していた。
『あなたにわたしが死んだ姿は見せません』
『決して一人には致しません』
「待っていろ」
そして、憎き男鬼の黒い笑みが黒い炎を纏って脳裏で燃え盛る。
「俺は人間としてお前を撃つぞ…。
頸を洗って待っていろ…童磨!!」