第9章 月詠の子守唄
まだ日が高く、屋敷内に西日が差し込む。
玄関のドアを開けると、悟の出迎えを受け、6人は地下へと降りる。
「珠世さん、愈史郎さん!!ただいま帰りました。桜華さまと狛治さま、お連れの鬼殺隊の方をお二人を迎えてまいりました!」
明子の明るい声に、男の苛立った声が返った。
「おい、もっと静かに出来ないか!」
「愈史郎!やめなさい。」
「申し訳ございません!珠世様!」
主人に手懐けられたようなビシッと礼儀正しく潔い返事で返す男の声。
それを聞いた桜華は、男の方の声にも懐かしさを感じ、胸を暖かさが包む感覚がした。
引き戸が開けられ、男の方が先に姿を表し、それに続いて現れた見慣れた女の方の着物の柄に何故か目頭が熱くなる。
「桜華さん.......ホントに......」
涙くんで、口元を両手で抑えこちらを見る女性は見覚えがあった。
「珠世さん......お久しぶりです。会えて嬉しい.....。」
「覚えていらっしゃるの?」
「えぇ。まだうっすらとですが、先日色々な経緯で思い出しました....。」
「そうだったのですね....。ご立派になられましたね....。」
「そんな.....。珠世さんにもいろいろとご心配、お掛けしました......。」
涙を流しながらどちらともなく抱きしめあって再会を喜んだ。
「生きてらっしゃって良かった......本当に......本当に......」
聖母のように艶やかで美しい女鬼の声は美しくも儚い。
人を襲うことの無い鬼に初めて会った他3人は目の前で起きていることに驚愕しながらも、その雰囲気に言葉をかけることが出来なかった。