第19章 ドンキホーテ・ロシナンテ
パンクハザードで船を浮かせた時、一瞬で分かった。
航海の途中、欲しいと思った奴は躊躇い無く仲間に引き入れてきた。
アイツだけだ。
唯一それが許されなかったのは。
どれだけ遠かろうが、視界に入る距離で、存在を感じられる範囲で、俺がアイツを見間違う筈がない。
──そう確信していただけに、目に映ったものが俄には信じ難く、殆ど反射で引き寄せ、確かに腕の中に居ることを実感した時は流石に言葉が出なかった。
敵前でガラにもなく呆然としてしまったのは不覚だったが、あの状況で平静でいられる方が異常だろう。
──何故、こんな所に居るんだ。
島を出るのが怖いんじゃ無かったのか。
どうやって海を渡ってきた?
海楼石は?まだ足につけたままか。
聞きてぇことは山ほどあったが、問い詰めるだけの余裕は無い。怒涛の混乱が過ぎた後はただ、何故このタイミングなんだという思いだけが胸の内を占めていた。
勿論、全く嬉しく無かったと言えば嘘になる。一度決めたら聞かない性格も、最後は結局俺が折れることになる流れも、アウラはあの頃と何一つ変わらなかった。真っ直ぐに見つめてくる眼差しもあの頃のままで、それが無性に胸の奥底を昂らせた。
──だが。
ただ素直に懐かしく思うには、あまりにもアイツの置かれている状況が危ういのも確かだった。
異常なほど、ドフラミンゴの声に反応するアウラ。何があっても守り抜く覚悟だったが、アイツの内側で何かが起きているなら止めようが無い。
パンクハザードで酷く苦しんだ末に気を失うのを見て、コラさんが恐れていたのはこれだったのかと瞬時に悟った。